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東京地方裁判所 昭和62年(ワ)7497号 判決 1988年6月13日

原告

甲田花子

右法定代理人親権者母

甲田月子

右訴訟代理人弁護士

山本清一

被告

乙川ハル

被告

乙橋夏子

被告

乙橋秋子

被告

丙木冬夫

右被告四名訴訟代理人弁護士

松永渉

長谷川健

右訴訟復代理人弁護士

伯母治之

主文

一  被告乙川ハル、同乙橋夏子及び同乙橋秋子は、原告に対し、別紙物件目録一及び二記載の各不動産につき、東京法務局港出張所昭和六一年二月二四日受付第五九五六号をもってされた乙橋太郎持分全部移転登記を、被告乙橋夏子及び乙橋秋子の持分の割合を各二五分の二、原告の持分の割合を二五分の一とする乙橋太郎持分全部移転登記に更正登記手続をせよ。

二  被告丙木冬夫は、原告に対し、被告乙川ハル、同乙橋夏子及び同乙橋秋子が原告に対して前項の更正登記手続をすることを承諾せよ。

三  訴訟費用は被告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  乙橋太郎(以下「太郎」という。)は、別紙物件目録一及び二記載の不動産(以下「本件各不動産」という。)につき、各五分の一の共有持分権を有していた。

2  太郎は、昭和五九年五月二日死亡した。

3(一)  太郎は、昭和三八年一月二四日、被告乙川ハル(以下「被告ハル」という。)と婚姻し、被告ハルとの間に、昭和三九年六月一六日被告乙橋夏子(以下「被告夏子」という。)を、昭和四一年九月二三日被告乙橋秋子(以下「被告秋子」という。)をそれぞれもうけた。

(二)  東京地方裁判所において、昭和五三年五月二三日、同裁判所昭和四八年(タ)第一一六号離婚請求事件(原告は太郎、被告は被告ハル、以下この訴訟を「本件離婚訴訟」という。)につき、太郎と被告ハルとを離婚する旨の判決(以下「本件離婚判決」という。)が言い渡された。被告ハルは、この判決に対して控訴したが、昭和五三年九月一一日、右控訴を取り下げたため、同日本件離婚判決は確定した。

(三)  太郎は、昭和五七年三月二四日、甲田月子との間に、原告をもうけ、同年七月二四日、原告を認知する旨の届け出をした。

(四)  以上のとおり、太郎の相続人は、その子である被告夏子、同秋子及び原告の三人であり、他に相続人はいない。

(五)  よって、本件各不動産についての太郎の五分の一の共有持分権は、被告夏子及び同秋子において各五分の二、原告において五分の一の割合で相続したので、被告夏子及び同秋子は、本件各不動産につき各二五分の二の共有持分権を、原告は二五分の一の共有持分権をそれぞれ有することになる。

4  本件各不動産につき、東京法務局港出張所昭和六一年二月二四日受付第五九五六号をもって、昭和五九年五月二日相続を原因とし、被告ハル(当初は乙橋ハルと登記されていたが、昭和六一年六月一二日乙橋ハルと登記名義人表示更正登記がされた。)の持分を一〇分の一、被告夏子及び同秋子の持分を各二五分の一、原告(その名が花コと誤記されている。)の持分を五〇分の一とする太郎持分全部移転登記(以下「本件登記」という。)がなされている。

5  本件各不動産につき、東京法務局港出張所昭和六一年六月一二日受付第二一四四〇号をもって、被告丙木冬夫(以下「被告丙木」という。)を権利者とする被告ハル、同夏子及び同秋子持分全部移転請求権仮登記(以下「本件仮登記」という。)がなされている。

6  太郎と被告ハルとの離婚事項は、昭和六二年三月二日戸籍に記載されたため、本件登記及び本件仮登記において被告ハルの表示は「乙橋ハル」となっている。

7  よって、原告は、被告ハル、同夏子及び同秋子に対して、本件各不動産につき、本件登記を、被告夏子及び同秋子の持分の割合を各二五分の二、原告の持分の割合を二五分の一とする太郎持分全部移転登記に更正登記手続することを求め、かつ、被告丙木に対して、被告ハル、同夏子及び同秋子が原告に対して右の更正登記手続をすることを承諾することを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は認める。

3  同3(一)及び(二)の事実は認める。(三)の事実は知らない。(四)及び(五)は争う。

4  同4の事実は認める。

5  同5の事実は認める。

6  同6の事実は認める。

三  被告らの主張(請求原因3(四)に対して)

1  被告ハルは、本件離婚訴訟が控訴審に係属中、太郎との間で、離婚しない旨の裁判外の和解をしたため、その控訴を取り下げ、その後再び夫婦生活を継続した。

2  このような事情があるので、本件離婚判決は形式的には確定しているものの、実質的確定力はないので(大審院大正一一年六月五日判決法律学説判例評論全集第一一巻民事訴訟法四六七頁)、被告ハルは、太郎の妻としての相続権を有する。

四  被告らの主張に対する認否

1  被告の主張1の事実は否認する。被告ハルと太郎との間においては、単に、子供達が成人するまでは離婚の届出をしないとの和解が成立したにすぎない。

2  同2は争う。

第三  証拠関係<省略>

理由

一請求原因1、2並びに3(一)及び(二)の事実は当事者間に争いがなく、<証拠>によると、請求原因3(三)及び(四)の事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。

ところで、被告らは、被告らの主張欄記載のとおり、被告ハルは太郎の妻としての相続権を有する旨主張するが、裁判離婚においては、その離婚判決が確定することにより、戸籍の届出を待つまでもなく直ちに離婚の効力が生ずるところ、たとえその離婚判決の確定前に当事者間で離婚しない旨の裁判外の和解がなされていたとしても、そのままその離婚判決が確定してしまった以上、離婚の効力の発生には何ら影響しないと解されるので(当裁判所は、被告らの引用する判例の見解には従わない。)、被告らの右主張は主張自体失当である。

そうすると、本件各不動産についての太郎の五分の一の共有持分権は、被告夏子及び同秋子において各五分の二、原告において五分の一の割合で相続したことになるので、被告夏子及び同秋子は、本件各不動産につき各二五分の二の共有持分権を、原告は二五分の一の共有持分権をそれぞれ有することになる。

そして、請求原因4ないし6の事実は、当事者間に争いがない。

二以上の次第で、原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官谷口幸博)

別紙物件目録<省略>

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